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医療経営者リレーインタビュー第5回 医療法人社団愛心会 理事長 服部愛弘様

    
医療経営者インタビュー
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医療経営者リレーインタビュー第5回 医療法人社団愛心会 理事長 服部愛弘...

マネジメントパートナー・エンの柴田です。
医療経営者インタビュー第5回目の医療経営者は、医療法人社団愛心会 理事長 服部愛弘様です。
前回の上田先生からのご紹介です。

今回は、服部様のご多用の中、弊社インタビューに快諾いただき、お時間を頂戴しました。

医療法人社団愛心会 理事長 服部愛弘先生とマネジメントパートナー・エンの代表 柴田秀樹

医師になろうとしたキッカケは何ですか?

父が裁判官(判事)を務めていたので、私自身も法律家になろうと思っていたのですが、理系が得意だったこと、当時理系の中でも医学部が人気だったこと、学校の先生にも薦められたことなどが合わさり、はっきりとした動機を持たないまま医学部へ進学しました。
大学を卒業して医師になってからも「こんな自分が医者になっていいのか」「やっぱり受験しなおして法律関係に進むべきだったのか」と悩み続けることになりました。
結局のところ、医師を続けながら司法試験の勉強に取り組みましたが、弁護士と医師の両立は厳しいと感じたので、医師一筋で働いていこうと決意しました。これが30歳頃ですね。

循環器を専門とする内科医になったのは、外科医として高い技術と精密な手術によって患者さんを直接治療するより、内科医として患者さんとのコミュニケーションを通じて、一人一人に合った医療を提供する方が自分に合っていると感じたからです。
特に循環器、つまり心臓や血管の疾患に携わると、患者さんと長く付き合うことになります。心臓病や高血圧に対して、患者さんがどう向き合っていきたいか、患者さんの話をじっくり聞いた上でいくつかの治療方法を選択肢として提供できるのは、多くの人の悩みに寄り添う弁護士の仕事とも通じる点があり、まさに私自身が目指した医療でもあります。

今のクリニックを創設した理由は何ですか?

元々は中津川市民病院で10年勤務していましたが、大きな組織の中では先ほどの「自分の理想とする医療」を提供するのが難しいと感じていました。
より密接に患者さんのニーズに応える為にも、規模を絞って循環器専門の外来として力の及ぶ限り医療に携わっていこうと思い、現在の医院を開業しました。

創設してから、一番困難だったことは何ですか?

特に何事もなく、開業から今日に至るまでスムーズに来られました。
大きなトラブルもなく、自分の理想とする形で医療を提供し続けることができていると思います。

今の仕事をしていて良かったと感じる時は、どんな時ですか?

患者さんと良好な関係を築き上げていく過程で、法律の分野で相談に乗ったり、色々な話で盛り上がったり、「ああ、やりがいのある仕事だな」と感じますし、自分の目指していた医療を実現できていると満足しています。
他にも毎月コラムを書いて患者さんにお渡ししているのですが、患者さんからその感想や日頃の治療に対し感謝の言葉をいただけると嬉しいですね。
そのコラムは20年間毎月書き続けているのですが、患者さんの中にはすべて保管している人も居て「先生、こんなになりましたよ」と何百編にもなるコラムの束を見せてくださったこともあります。
私が書いた文章を読んでいただけるのも嬉しいですし、文章を通じて私の人となりを知っていただくことで、5分10分の診察では決して築くことのできない、より密接な信頼関係ができあがっていると思います。

医院経営において一番大切なものは何ですか?

医療は患者さんからの信頼なしでは成り立たないものなので、私たちが提供する診療・医療を認めて頂けるよう心がけています。
特に循環器を専門とする以上、患者さんとそのご家族とは長期間のお付き合いになります。
大きな病院ではなかなか聞いてもらえない個人の事情や家庭の悩み事などに、医師としてだけでなく人として向き合えるパートナーでもありたいと考えています。
そのうえで重要なのが「相手の自由を認める」ことではないでしょうか。
私は患者さんにもスタッフにも、細かい注意や指導をあまり行いません。
患者さんには細かい治療の指示をせず、患者さんご自身にいくつかある治療方法の中から取り組みやすいものを選択してもらい、主体的に治療に専念していただこうと考えています。
また、スタッフには私の誠実に診療する姿を示すことで、何かを感じ取って欲しいと思っています。
私は常々スタッフへ「最後は私が責任を持つから」と言って主体性を持って動くよう伝えています。
そうすると彼らは自ら学び、考え、行動してくれます。
最近ではスタッフが診察前の問診の段階で、患者さんの様子を見ながら心電図を取ってくれることもあり、診察時にとても助かっています。
患者さんからスタッフへの評価も高く、優秀なスタッフが揃っていると思います。

5年後、10年後の医院経営のビジョンは何ですか?どのようになっていたいですか?

10年後くらいに息子へ今の医院を継がせたいと思っています。
息子は既に医者として働いているので、30代半ばになる10年後にどのような形で引き継がせるのか、もしくは別々に活動をするのかも今後話し合っていきたいです。
中津川育ちで地元愛のある息子で、本人も「いずれ中津川に戻る」と言っていますし、事業継続については安心しています。

そのビジョンを達成するために、今、悩みごとは何ですか?

現在の時点で中津川は医者が足りていません。
これは中津川に限らず、全国の地方に言えることですが、都市部とその周辺に医者が集中してしまい、かなり偏った配分になっているのが現状です。
都市から地方へ移って開業する医師もいますが、そのお子さんが医師になった時、結局都市へ出て行ってしまい1代限りの医院となってしまう場合が多いです。
中津川はこの先、リニアの駅ができることで人口が増え、それによって医師も増えてほしいですが、現状のままでは、将来の医療の需要に対し、小さな診療所では追い付けなくなることが気がかりです。
介護や訪問診療も含め、活動の場を広げる必要があるのではないかと思っています。

先生の座右の銘は何ですか?

急ぐべからず 不自由を 常と思えば 不足なし (徳川家康)

先生のおすすめの本は何ですか?

「老子」
私の好きな言葉に「無為自然」というものがあります。
何もせずして物事がうまくいくこと、というようにありたいですね。

編集後記

私は、今回のインタビューで一番印象に残ったのは、「常々スタッフへ『最後は私が責任を持つから』と伝えている」という服部先生の言葉です。まさにリーダーの条件を実践されていると感じました。スタッフへこの姿勢を言葉で伝えている人は、とても少ないと思います。
これを言葉で伝えないために、部下は失敗したとき自分が責任をとらなければならいことを恐れ、上司から言われたことだけをこなす指示待ち人間になってしまうことが多いと思います。
服部先生は、スタッフが患者さんのためになると思ったことを自由にさせ、その結果、患者さんに喜んでもらえるという好循環を作り出されています。
これが、何もしなくてもうまくいく、無為自然という経営だと感じました。

【インタビュー日時】 2020年11月5日(木曜日) 服部内科クリニックにて

今回の医療法人に関する情報

法人名称 : 医療法人社団 愛心会
所在地  : 岐阜県中津川市駒場1547-20
電話 : 0573-65-8877

運営施設 : 服部内科クリニック 内科・循環器科・呼吸器科・神経内科・小児科

岐阜県中津川駒場1547-20 医療法人社団愛心会 服部内科クリニック

Writer:柴田秀樹                                医療介護分野の人事労務の専門家。職員の応募採用・教育評価からトラブル相談・制度改正への対応までトータルサポートしている。社員50余名を雇用する製造業の元2代目経営者として20年、労働基準監督署3年の勤務キャリアがあり、経営者の気持ちに寄り添った経営アドバイスに定評がある。社会保険労務士

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