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医療経営者リレーインタビュー 第3回 医療法人社団日新会 理事長 赤座 薫 様

    
医療経営者インタビュー第3回
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医療経営者リレーインタビュー 第3回 医療法人社団日新会 理事長 赤座...

マネジメントパートナー・エンの柴田です。

医療経営者インタビュー第3回目の医療経営者は、医療法人社団日新会 城山病院理事長の赤座先生です。

前回の医療法人社団啓仁会の院長安藤広幸先生よりご紹介を頂きました。

今回は、赤座先生のご多用の中、弊社インタビューに快諾いただき、お時間を頂戴しました。

インタビューは、応接室でお茶と一緒に出された菓匠満天星一休の和菓子の話題から始まりました。

赤座先生が一休でおすすめの和菓子は「森の水鏡」です。栗きんとんが葛で包まれ、いつ食べても栗きんとんのしっとりさが味わえると教えていただきました。

医師になろうとしたキッカケは何ですか?

小学校3年生の頃、夏休みに海へ家族旅行をする予定をしていて、

今から旅行に出かけようとしている時に、医師である父親へ急患の連絡が入り、急遽、旅行はキャンセルになってしまい、とても悲しい思いをしました。

でも父親が急いで病院へ行く姿を見て、「医者という仕事は周りの人からとても必要とされている仕事なんだ!」と子供心に強く感じました。

それがキッカケです。

今の病院を引き継いだ理由は何ですか?

医局が名古屋大学第二外科で外科医として先進医療に取り組んでいました。

腹腔鏡手術の黎明期には、岐阜県内や愛知県内の公立病院で腕を磨きました。

同じ医局の父親が、1981年から城山病院の院長となり、地域医療に頑張っていました。

教授から「そろそろ父親を手伝ったらどうか」と城山病院への異動を要請されました。

その頃の城山病院は80床へと増床したのを期に療養病棟へ転換していたので、急性期病院から慢性期病院への異動はあまり乗る気ではありませんでしたが、2003年に赴任することになりました。

引き継いでから、一番困難だったことは何ですか?その時、どうやってそれを乗り越えて来られましたか?

二つあります。

一つは、ベッド管理がうまくいっていなかったことです。

それを改善するために入退院の予約管理を徹底したり、介護者休養目的短期入院を積極的に行ったりと、既存のハードの中での細かいマネジメントの工夫が経営安定につながり、その結果利用率も上昇し、今は90%台後半を維持しています。

その時に病床管理のためにケアマネジャーや社会福祉士との連携の重要性も学び、後に立ち上げた回復期リハビリテーション病棟の運営の際にも大きく役立ちました。

二つ目は患者さんに在宅復帰をしてもらうため後方支援病院としての役割が地域に必要だと考え、2007年に岐阜県東濃東部地域で初めて回復期リハビリテーション病棟を立ち上げました。

外科医の自分が回復期リハビリテーションを行うことに不安がありましたが、岐阜県多治見市で回復期リハビリテーションを行っているサニーサイドホスピタルで院長をしていた同期の医師に会い、彼から「外科医だからこそ、全身を診ることができるし、リスクジャッジもできる」という言葉をもらったことで、回復期リハビリテーション病棟の実現につながりました。

その困難を振返り、医院経営において一番大切なものは何ですか?

大切にしているのは「笑顔」です。

そして職場に愛情がある雰囲気にしていくことです。

スタッフに対しては、自らに余裕がないと患者様に満足してもらう医療サービスを提供できません。その余裕とは、賃金、職場環境など当院で働いてもらうことに満足してもらうことです。

その結果として今年も永年勤続表彰を受ける職員が増加していることは嬉しい限りです。

また中津川市は高齢化率が30%を優に超えています。

独居高齢者の患者さんや老々介護が多いため、その患者さんを必ず笑わせてから帰宅してもらうことがポリシーです。

診察時に患者さんへ冗談を言ったとき、笑顔になれるかをいつも注意していています。

笑顔がなければ病気や家族のことで心配ごとがあるかもしれないと診察をしています。

多くのメディアは、医療や介護の現場は3Kだと伝えますが、決してそうではありません。大切なのは愛情をもって人と接することです。

愛情を持って接するには自分自身に余裕が必要で、それが笑顔につながります。

もう一つ大切にしていることは、「同じ方向を向いている人が職場に集まること」です。

そして患者さんにとって良かれということを成すだけです。

医療や介護に携わる人は、自己の生活基盤がしっかりしていることが大切で、自分自身や自分の生活を不満に思っている人は良いサービスを提供できません。

赤座先生の人生を変えた1枚の写真について

平成13年のお正月に70代の患者さんから1枚の写真をもらいました。

それは透き通った青空を背景にした富士山の写真です。

その患者さんはその前年に大きな手術をして年末に退院され、その後2か月もしない間にご自身で出掛けられ撮影してきたものだそうです。

私はそれを見たとき、趣味を持っているということは、これだけ人を動かす力があるのかと感動しました。

それを契機に患者さんに趣味があるか否かを観察していくと、趣味のある人は常に若く元気で、趣味のない人はどんどん衰えていくことが分かりました。

私もいつかリタイアするときのために、趣味にも真剣に取り組もうと思いました。

学生時代にビッグバンドに所属していた経験を活かし、再びギターを弾いています。

5年後、10年後の医院経営のビジョンは何ですか?どのようになっていたいですか?

将来については、地域医療と介護について考えていく必要があります。

ここ数年中津川市の年間死亡者数は1000人程度と横ばいで、医療ニーズはピークアウトしかかっています。

10年後、15年後は、地域住民が高齢化し介護ニーズが増えていくと予想され、2040年には要介護者が今より15%くらい増えると思います。

そう考えるとこの地域の高齢化社会の医療と介護を混乱なくソフトランディングすることが目的で、当院だけのことを考えるのではなく地域と連携しながら、それに対して当院ができることをやっていくことです。

具体的にはまだまだ地域包括ケアシステムが構築されていないので、これをきちんと機能するように整備していくことです。

そして地域住民が安心して医療や介護の提供を受け、人生の最後を迎えられるようにすることです。

先生のおすすめの本、または愛読している雑誌は何ですか?

宇沢弘文著の「社会的共通資本」 (岩波新書696)

先生の座右の銘は何ですか?

「春風を以て人に接し、秋霜を以て自らを粛む」

儒学者 佐藤一斎著の言志四録より

編集後記

私にとって赤座先生とのインタビューで一番印象に残っているのは、「医療のなかでも外科はジャズの世界と近いものを感じる」と話されたことです。

私が「どうしてですか」と尋ねると、「ジャズは初めて会ったミュージシャン同士で素晴らしい音楽を奏でることができる。手術も初めて会った医師同士が、そのルールの中で素晴らしい手術を行うことが可能である。セッションと同じです」と話されました。

すべては決して一人でできるものではなく、周りの協力があって出来上がっていくものだということを改めて、私は感じました。

その原動力は、「笑顔」

その笑顔を引き出すのは、赤座先生が冗談を話される雰囲気でした。

インタビューの最後に赤座先生と私の写真を撮影してもらう時も、赤座先生はカメラを持った女性の事務員さんへ冗談を投げかけ、その事務員さんのニコニコした笑顔がありました。

その何気ない言葉掛けに周りの人への愛情や優しさが、この法人にはいつもあると感じました。

ご多用のところ、ありがとうございました。

【インタビュー日時】 2020年7月7日(火曜日) 理事長室にて

法人名称 : 医療法人社団日新会

所在地  : 岐阜県中津川市苗木3725-2

URL : http://n-shiroyama.info/

電話 : 0573-66-1334(代)

【運営施設】

城山病院(内科・消化器内科・整形外科・循環器内科・神経内科・呼吸器内科・外科・リウマチ科・リハビリテーション科)

【関連施設】

介護老人保健施設 城山

訪問看護ステーション 城山

指定居宅介護支援事業所 城山

この記事は、医療介護分野の職員の応募採用・教育評価からトラブル相談・制度改正への対応までトータルサポートする人事労務の専門家柴田秀樹(社会保険労務士)が執筆しました。

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